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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

永安旅社!

              ≪八月十七日≫     ―壱―



  9:30、高級ホテルYMCAを出る。


 六年前、会長が泊まった事があるという、香港でも有数の安宿を探す

事にした。


 暑い陽射しは、僅かな歩きでも汗を生む。


 重いバックパックは両肩に食い込んでくる。



  まず、この日の初仕事は、航空券の確認。


 ビザを取得していない為に、七日以内に香港を出なくてはならない。


 泰国航空のオフィスは、スターフェリーの近くにあった。


 スターフェリーとは、九龍と香港島のビクトリアを結ぶフェリーのこ

とである。


 この他にも、海底トンネルでも結ばれているが、これは車だけ通行で

きる自動車専用のトンネルで、料金も高い為庶民はこのスターフェリーを通

勤に利用している庶民の足であるらしい。



  航空代理店にて、チケットの確認を済ませると、午前中の仕事

は終った。


 この後、郵便局に立ち寄り、日本に向けて第二報を出す。


 封書(80¢≒49円)、ハガキ(40¢≒25円)だ。



  スターフェリーのある港に着くと、対岸のビクトリア地区に立

ち並ぶ高層ビル群が、朝陽を受けて美しく輝いている。


 わずかばかりの海も朝陽を受けてキラキラと輝き、昨夜のネオンとは

違った美しさと輝きを放っている。


 まるで高層ビル群が海に浮かんでいるように見える。



  スターフェリーの近くで軽い食事を取った後、スターフェリー

事務所へ向かう。
 大人一人の料金は15¢(≒9円)と安い。


    鉄臣 「まるで未来都市やね。」


 海は船でラッシュアワーの様相を呈している。


 ビクトリアはすぐそこ、僅かな航海である。


 ビルの看板には、日本企業の看板が一番目立つ所に、一番大きく掲げ

られている。



  フェリーが香港島(ビクトリア地区)に着くと、早速安宿を探

す為に、右に海を見て歩き出した。


 バックパックの重さのせいか、暑さのせいか、随分歩いた気がする。


 20分も歩いただろうか。


 やっとそれらしい名前を”Bank of America”のビルの上に、見つけ

る事ができた。



  ビルの階段を上がり12楼へ。(楼とは日本で言う、階の事)


 部屋にはシャッターが下ろされ、内部は見えるのだが、鍵が掛けられ

ている。


    鉄臣 「開いてないの?」


    会長 「やってるよ!常に危険だからシャッターを下ろして鍵

          を掛けてるだけさ。」


    鉄臣 「ふ~~~~ん。」


    会長 「呼んでみろよ!」


    鉄臣 「こんにちわ!誰かいませんか?」



  やっとの事で二人の可愛い女の子が中から出てきた。


 すぐには鍵を開けない。


 シャッターを挟んで、会長が得意の広東語で話し掛ける。


    会長 「泊めてもらいたいんだけど!」


    女の子「メイヨー!(ダメ!)」


 何度もお願いするが「メイヨー!」を繰り返すばかり。


 会長も諦めることなく、何度もお願いすると、やっと中に入れてくれ

た。



  漢字ならわかるだろうと、メモ用紙に用件を書き込み、しつこ

く宿泊をお願いすると、やっと彼女達のパパに電話をし始めた。


 どうやら「メイヨー!」といったのは、ここは宿ではないと言う意味

だったらしい。


 宿は3楼に移ったと言う事であった。



  香港での一楼は日本で言う二階にあたり、一階はGであらわされ

ると言う事らしい。


 3楼に行くように言われ、また下に移動する。


 三楼に降りると、日本語の上手な徐(ジョ)さんが迎えてくれた。


 用件はもうすでに理解してくれていて、早速一室が用意された。



  部屋はコンクリートに囲まれただけの部屋で、三畳ほどの狭い

部屋に二段ベッドが二つ置かれているだけの粗末な、しかし我々に相応しい

部屋があった。


 とにかく、広いコンクリート剥き出しの部屋をベニヤ板で仕切ってい

るだけの部屋で、クーラーも一基ついているだけ、おまけにベッドもコンパ

ネ一枚の上にシーツを敷きつめただけのなんとも粗末なものだった。



    鉄臣 「ここで寝るの?」


    会長 「贅沢言うな!これで十分だろ!」


    鉄臣 「痛そうやな!」


    会長 「ヒッチハイカーは野宿が原則やろ!雨露がしのげれば

          こんなありがたいことはないやろ!」


    鉄臣 「ええとこですね!」



  しかしなんと言っても安い。


 一人一泊12HK$(≒730円)なのだ。


    会長 「六年前来た時は、8HK$(≒500円)だったから、ちょ 
         っと物価が上がってるのかな!」


    鉄臣 「ほんでも安いですよ。」


    会長 「これより安い宿は、野宿・・・ぐらいなもんかな。」


 われわれは、香港での拠点をここに置く事にした。


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